改訂新版 ロボットは東大に入れるか

昨日読了。

改訂新版 ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ)

改訂新版 ロボットは東大に入れるか (よりみちパン! セ)

良書。東ロボくんといえば、問題文と設問の一致文字数によって国語を解いたりと、小手先の技術で点数を稼いだエピソードが先行し、何のための研究かわかりにくいイメージがあった。しかし、この本を読むことで、今および少し将来のAIがどこまでできるのか、人間にしかできないことは何か、その中でどうしていけばよいか、などの、筆者の先著である「コンピュータが仕事を奪う」に通じるメタなテーマに帰着していることがわかった。
万能なコンピュータを作ることは不可能だが、コンピュータと人間の協働により今までできなかったことができるようになる。また、逆にコンピュータを活用した犯罪が進化する。戦争も人間が直接戦闘に参加しなくてもできるようになり、戦争のハードルが下がる。
現在の仕事は、賃金と複雑さでスマイルカーブの関係になっている。賃金が高く複雑性が高い仕事は、コンピュータを利活用することでさらに生産性が上がり賃金はさらに上がる。賃金が中くらいの仕事は複雑性が低くコンピュータに代替されやすい。賃金が低いがコンピュータにとって複雑性が高い仕事、例えばイラストを理解して分類するとかは、コンピュータの下請けとして、いわゆるクラウド(群衆)コンピューティングになり世界の最低賃金との競争になる。このような状況下で人間が労働する場が減っていくが、伝統的経済学としてはその分新しい仕事ができて仕事を移ればよい、となる。しかし、この変化のスピードがどんどん早くなるとミスマッチが起こる。今の学校教育は、複雑性が低い部分が中心であり、長期的には学校教育を根本的に見直す必要が出てくる。