ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

昨日読了。

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

面白い。筆者が以前出した「世界の経営学者はいま何を考えているのか」の最新追補版のような位置づけ。
経営学では研究と教育と啓蒙が分離しており、研究の担い手である米国で経営学Ph.Dを専攻する日本人はほとんどいないため、こういった情報が日本語で発信されることが希少になっている。啓蒙で言われる理論はかなり前のものか、科学的では無いものが混在している。
競争環境にはIO=Industrial Organization=産業組織型(大手5社未満の寡占状態)、チェンバレン型(複数の企業がある程度差別化しながらそれなりに競争する状態)、シュンペーター型(競争環境が際立って不確実な状態)があり、IO型にはポーターのSCP(ポジショニング)戦略が整合性高く、チェンバレン型には経営資源に注目するRBV(リソースベースドビュー)が整合性高く、シュンペーター型には素早く柔軟に対応するリアルオプション戦略か整合性高い。シュンペーター型では戦略を立てる意味が無い。日本企業はじっくりと経営資源を育て上げるRBVに慣れているが、競争環境がシュンペーター型になっているのに適応できない。パナソニックB2Bにフォーカスしてシュンペーター型から脱出しようとしている。
ビジネスモデルと戦略は別の概念。シンプルでイノベーティブなビジネスモデルの中で、差別化戦略とコスト優位戦略がある。
イノベーションの絶対条件は、両利きの経営をすること。知の深化と知の探索を高い次元でバランスをとる。企業組織は知の深化に傾きやすい。製品やサービスのドミナントデザインが確立すると組織やルールもそれに順応する。新しい組み合わせを作り出す「アーキテクチュラルな知」が求められる。組織としての知の探索を進めるには、組織の知を学ぶのが早いメンバーと遅いメンバーが混在していた方がよい。
イノベーションは創造性と実現への橋渡しの組み合わせ。前者は弱いつながりをたくさん持つ「チャラ男」、後者は強いつながりを持つ「根回しオヤジ」。1人で両方できることは稀で、2人でタッグを組むとよい。また、Whatの共有ではなく、Who knows whatすなわちトランザクティブ・メモリーが重要。ブレストはアイデア出しには有効性は低いが、トランザクティブ・メモリーを強化するのに役立つ。
ダイバーシティについては、性別などの目に見える属性でのダイバーシティではなく、経験などの目に見えない属性のダイバーシティが重要。
日本で起業が少ないのは、事業倒産のやりにくさが原因ではなく(むしろ、やりやすい国の方)、キャリア倒産のやりにくさが原因。退職せずに副業として起業する「ハイブリッド起業」が望ましい。