意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

本日読了。

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

非常に面白い。
意識レベルを測定する手段として、「統合情報理論」を導入し、意識の単位Φを定義。システム内部にある多様性と統合度を単位:ビットで表現する。
多様性とは状態変化の多さであり、統合度とはシステムを分割すると状態変化総量に大きな影響を与えるかどうかである。例えば、小脳は800億個のニューロンを持つが、細かく分割しても機能は維持されるため統合度が小さい。一方、心臓は全体で1つのシステムを作り上げ分割できないが、拍動はシステム全体で同期しており、状態変化は少ない。これに対して、大脳視床皮質系は200億個のニューロンでありながら100兆個のシナプスで複雑に結合して(もしくは結合しないで)おり、システム全体としての多様性が高いとともに統合度も高い。
これを安全に測定するしくみとして脳への磁気刺激と脳波計を組み合わせた機器を開発。実際に測定すると、覚醒している時やレム睡眠時には意識レベルが高く(刺激に対しての反応が複雑)、ノンレム睡眠や昏睡時には意識レベルが低くなる(刺激が伝搬しないか一様に伝搬する)ことがわかった。
植物状態の人間の意識レベルを測定したり、動物の意識レベルを測定したり、といった応用が考えられている。
統合情報理論は数学的にも面白そう。N個のニューロンをどのようにシナプス接続するとΦがどうなるか、など。