エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング

昨日読了。

良書。テーマが仕事術なのか組織論なのかはっきりしておらず、内容もあちこち飛んで散発的で統一感が無い。全体の関係性をとらえるシステム思考が大切と説いているわりには、この本がシステムになっていない。しかし、読み物としての個々のトピックのレベルは高い。アジャイルなチームについてのトピックが多く、タイトルは「アジャイル組織論」としたほうがぴったりする。
エンジニアリングの本質は不確実性の削減(=情報をうみだすこと)であり、コミュニケーション能力とはコミュニケーションの不確実性を減少させる能力である。
アジャイルなチームとは、「自己組織化がされた、ゴール認識が高くチーム全体をメンタリングしている(チームマスタリーを得る)状態、すなわち、理想状態にチームが向かうために、お互いにメンタリングし、不確実性に向き合い、減少させることができる状態」であり、アジャイル方法論とは、「チームマスタリーを得る方法論、すなわち組織学習の方法や考え方」であり、アジャイル開発とは「アジャイル方法論の1つの手法としての開発プロセス」のこと。ちなみに、アジャイル開発は大規模開発ほど効果を発揮するとのこと。
計画駆動型の開発は、初期に目的不確実性を減少させ(要件定義)、しかるのちに方法不確実性を減少させていく。スケジュール不安に対応するもので変化に弱い。アジャイル型開発は、目的不確実性と方法不確実性を同時に連携して減少させていく。マーケット不安とスケジュール不安の双方に対応するもので変化に強い。
不確実性をマネジメントするために、不安を見える化する(不安要因の明確化や、概念実証・プロトタイピング)、多点見積もりする、などをして、エージェンシー・スラックが発生することを防止する。スプリントごとのストーリーポイントの消化速度をヴェロシティとして測定し、後工程の予測精度をあげる。