企業変革の教科書

 本日読了。

企業変革の教科書

企業変革の教科書

 

戦略コンサル業界経験の深い筆者による、企業変革のノウハウ集。

4つのモデル。S2G(シュリンクトゥグロー)、自己破壊(セルフディスラプション)、組合せ(ポートフォリオオブイニシアチブ)、メビウスモデル。それぞれ日本企業向けの処方箋も述べられている。S2Gは、レイオフできない日本企業では、S&Gかつ既存事業の従業員の受け皿事業を作るべき。完全な新事業を作るのではなく、既存事業からの「ずらし」と成長した新事業を既存事業に組み入れる「つなぎ」をするべき。などなど。メビウスモデルは筆者オリジナルで、バリューチェーン(時間軸)の着想、構築、提供と、エコシステム(空間軸)の顧客、商品・サービス、企業の9軸の中を移り変わるモデル。バタフライモデル。提供×顧客である顧客現場からのフィードバックを、着想×企業である組織DNA(パーパス)で精査し、着想×顧客である顧客洞察によって新たな顧客価値発見や顧客との関係見直しを経て、構築×商品・サービスである成長エンジンでスケールするビジネスモデルを作り込み、提供×企業である事業現場でデリバリーモデルを作り、最初の顧客現場にデリバリーをする。このサイクルを繰り返す。従来型企業は十字の動きしかできない、また顧客現場からすぐに事業現場に反映してしまう、ベンチャーは逆に現場が弱いためパーパスをすぐに価値発見に直結させてしまう。

という、第I部だけで1冊の本にすれば名著になったが、残念ながら筆者の豊富な知識をひけらかす魅力には逆えず、第II部以降はだらだらと経営うんちくが並ぶ本になってしまった。

なお、第II部以降も、J-CSVとしての日本企業が目指す価値転換(からだ→こころ(安全→安心、Landscape風景→Mindscape情景、Wellness健康→Happiness幸福)、共感共創力(個→共、狩猟民族vs農耕民族→Nomad遊牧民族、必然→Serendipity偶然)、日本的価値観(品質→QoX(eXperience)、Pure→Fusion融合、交感神経→副交感神経、Mouthful物質→Mindful精神))、真善美(ロゴス・エトス・パトス)など、これはこれで役立つことが満載なのだが、書籍としては魅力を損ねる構成になってしまっている。

カリスマコンサルでも、自身の著作についてはシュリンクトゥグローが足りない、という、皮肉な状態である。