世界の経営学者はいま何を考えているのか

年初読了。

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

とても面白い。日本であまり話題にならないとともに誤解されているような、最新の経営学トピックスを紹介。
ドラッカーは現代経営学(科学を目指す)ではなく、名言集である。
ハーバードビジネスレビューは啓蒙雑誌であり、学術雑誌ではない。
・ポーターの戦略だけでは通用しないハイパーコンペティションの世界になってきている。ファイブフォーシーズやポジショニングという「守りの戦略」だけではなく、製品開発や販促などの「攻めの戦略」が必要。
イノベーションには「知の探索」「知の深化」の双方の行動が必要。成功した企業は「知の深化」に傾倒するコンピテンシートラップに陥りやすい。これはイノベーションのジレンマに似ているが、より組織リスク的なものとして理論化されている。組織として探索と深化をバランスを保ちコンピテンシートラップを避けるための戦略・体制・ルール作りが必要。知のポートフォリオを把握するとともに、両利きの企業文化(15%ルールなど)が必要。日本企業では正規業務以外の活動でこの役割を担っていたが、コンプライアンス上の問題などからこういった活動が縮小されてきている。
・知の探索には弱くて広範なソーシャルな関係が、知の深化には強くて狭いソーシャルな関係が役に立つ。
・海外戦略には該当国の国民性を考慮することが重要であり、ホフステッド指数など研究されている。日本人は欧米よりは集団主義だが、アジアの多くの国よりは個人主義である。集団主義は、集団外との協調性は悪い。
・不確実な時代における事業計画には、リアルオプションが有効。仮説検証しつつ段階投資していく。上ぶれのチャンスも積極的にとりにいきつつリスクを一定量以内におさえる。従来の事業計画では上ぶれチャンスを逃す。
・CVP(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、事業会社がスタートアップに投資することである。知の探索の手段であり、かつリアルオプションでもある。スタートアップにとっては事業会社のリソースを活用できるチャンスになるが、事業会社にビジネスモデルを盗まれるリスクもある。事業会社は継続的にスタートアップからの評判を高める必要がある。